研究テーマ

(1) 血管平滑筋異常収縮の制御機構の解明 

平滑筋は血管、消化管、膀胱などの管状や袋状の臓器の壁を構成し、収縮・弛緩を繰り返して血圧調節や食物の消化吸収、排尿などの機能に重要な役割を果たしています。平滑筋収縮制御機構が破綻すると、高血圧、血管攣縮、消化管運動障害、排尿障害などの様々な病気をひき起こします。平滑筋収縮は、収縮タンパク質であるアクチンとミオシンの相互作用により起こりますが、この相互作用は細胞内のカルシウムイオンや様々な収縮制御タンパク質によって調節されています。血管平滑筋において、血圧調節に必要な正常収縮と病的な血管攣縮を引き起こす異常収縮では、細胞内カルシウムイオンの動態や収縮制御タンパク質のふるまい方が異なります。私たちは、血管異常収縮のシグナル伝達に中間径フィラメントやタンパク質分解酵素が関与する事を明らかにしました。中間径フィラメントやタンパク質分解酵素が収縮制御タンパク質の活性化に与える影響について、解析を進めています。

(2) 暑熱馴化の神経基盤と熱中症予防法の解明 

 地球温暖化にともない、熱中症が深刻な社会問題になっています。持続的な運動トレーニングや暑熱環境への曝露により形成される暑熱馴化(順化)は熱中症の予防に有効(図1)ですが、その形成機序は不明でした。これまでに私たちは、暑熱馴化したラットでは体温調節中枢が存在する視床下部において神経新生をともなう可塑的変化が生じて、暑熱馴化の形成に寄与することを明らかにしました(図2)。しかし、暑熱馴化形成時の視床下部における神経新生促進のメカニズムや、体温調節機能における詳細な役割には不明な点が多く残されています。本研究では、暑熱馴化形成時に視床下部で新生したニューロンの機能性や視床下部神経新生の分子メカニズムを解明し、暑熱馴化の神経基盤と熱中症予防法の確立を目指しています。